My life! after diagnosed with BC

術後療法や晩期再発への心の持ちよう

延々と続く術後療法と同じく続く晩期再発のこと。

タモキシフェンによる術後内分泌療法は、ATLAS試験とaTTOm試験で5年投与より10年が予後が良いが、AIは5年と10年どちらがいいのかを日本で検証したN-SAS BC 05試験の解説を読んだ。

HR陽性乳癌へのAI術後10年間投与の有効性を日本で証明

試験の対象は、I期からIII期の閉経後HR陽性乳癌患者のうち、術後内分泌療法としてアナストロゾールを5年投与、もしくは術後タモキシフェン→アナストロゾール2年以上で合計で5年間投与した患者。アナストロゾール(1mg/日)を5年間継続する群と終了する群に分けて評価する。

主要評価項目の無病生存期間(DFS)は、5年DFS率は継続投与群が91.9%、投与終了群が84.4%。N数、腫瘍径などの予後因子においても効果の差はなし。
予後と関連する無遠隔転移生存期間(DDFS)も継続投与群は97.2%、投与終了群が94.3%で、有意に継続投与群が良好。
遠隔再発率は、投与終了群が5.6%、継続投与群は2.7%。2次癌は投与終了群が4.3%、継続投与群が1.5%となっていた。
副作用による早期中止は9.6%。
対象者は、T1が50%、T2が40%強、リンパ節転移陰性(N0)が80%程度で「比較的予後の良好」な人が多いという表現をされている。
(でも、ケモ有が40%とのことなので、T2の多くやN+はケモ、ということ‥?)

AIはBMIに関連して効果の減弱があるそう。欧米人と比較してBMIが低くい日本人の「比較的予後の良好」な患者にAI10年投与にしても、3%に遠隔転移か‥。
しかも10%が副作用で挫折。

更に、えー、とショックだったのはこの一文。

晩期再発に関与するような因子、たとえばHRが強陽性、Ki67値、グレードが高い、リンパ節転移陽性などの症例

こういう人には、積極的に10年投与を検討する余地があるとのこと。
そもそも晩期再発を抑えるために5年延長して投与を検討するが、統計学的な差は小さく、骨折などの有害事象があるなどの理由で、高リスクな人には5年延長という考え方になりそうだが、その晩期再発の高リスク要因が「たとえばHRが強陽性、Ki67値、グレードが高い、リンパ節転移陽性など」ということ。

病理の結果待ちの際、ホルモン療法がしっかり効果があるHR強陽性であることを期待していたが、むしろ裏目だったということ?
でも弱陽性で、そもそもの治療効果が薄いのも不安だし‥。
どっちであっても不安がるのは性格の問題だろうか。

さらにEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group (EBCTCG)という2万5000例のメタ解析の結果では、5年のタモキシフェン後+AIは、AI投与なしと比べると延長投与0-1年から差がつき、5-10年のタモキシフェン+AIだと、延長投与2-4年から効果が遅れて出てくる。さらにAI単独の場合は、延長投与5年以降に差が出てくる。その理由としては、AIのCarry-over効果が考えられるそう。
私のタモキシフエンは何年続く予定かわからないが、5年投与後に閉経でなければおそらく継続。その後さらにAIかと思うと気が遠くなる‥。

リンパ節転移数で評価すると、N0だとAI延長投与の効果は少なく、5-10年間延長投与した場合の再発率は5.1%、延長投与なしは6.2%で絶対値の差は1.1%しかない。
それに対して骨折リスクは、5年間における差は1.8%(AI延長投与群が多い)なので、バランスが悪いということだ。
ただ、N0でも腫瘍径が大きい、グレードが高い、Ki67値が高いなど、他の因子があればまた事情は変わってくる。

ガイドラインの通り、すべてを一律で決めるのではなく患者の状況に合わせて選択していくことがやっぱり必要になっている。
(N0だから、T1だから等々の理由で)少ない治療でいいと考える医師か、慎重派の医師など、主治医の考え方によっても治療が変わってきそう。
早期なのだから大丈夫、と言ってもらえればうれしいが、それで本当に大丈夫なのかはひとくくりにはできないことが、むしろ安心と思うか不安が続くと考えるのか。


他、保険適用外となる術前療法としてのCDK4/6阻害薬(パルボシクリブ)とAI(レトロゾール)の併用に関して、細胞周期を停止させるCDK4/6阻害薬の評価としてKi67の変化を評価したPALLET試験の解説もあった。

試験の内容と結果は閉経後の術前治療なのでざっと読み飛ばしてしまったが、これ!

副作用についてはこれまでに分かっていたとおりで、パルボシクリブ併用群では好中球減少が多く認められました。興味深いのは、ホットフラッシュや関節痛といった更年期症状のようなものは併用群のほうが少なかったことです。今までのデータからも、こういうことがみられていましたので、何らかの相互関係がある可能性があります。

AIの関節痛は、自分が使うのはしばらく先のことだろうとはいえ気になっていたので、この先解消できるような組み合わせが出てくるといいなあ。


「将来的に」の希望の話では、がん免疫療法(IO:Immuno Oncology)の事も書かれていた。

トリプルネガティブ乳癌ではがん免疫療法(IO)が効果を示しています。HR陽性乳癌でも、CDK4/6阻害薬が抗腫瘍免疫を誘導することが示唆されており、CDK4/6阻害薬とIOの併用が検討されています。

CDK6がリンパ球の増殖を抑えるが、それを上回る免疫の活性化が得られると言われているそう。
乳がんは免疫原性の低いCold tumorという状態であり、IO単独では腫瘍縮小効果が少なかったので効果がないとされていた。
でも、TNBCではアテゾリズマブと化学療法を併用すると免疫活性を高めることができ、HR陽性ではCDK4/6阻害薬やHDAC阻害薬を併用するとColdをHotに変えてIOを併用する効果があるという考え方をするそう。

Cold Tumorってなに??と思って調べてみた。(正しく解釈できたか疑問‥)
Non-inflamed tumorとも呼ばれる状態で、免疫系ががんを見つけられていないために免疫学的に不活性で「Coldな」状態のがんのことを指すらしい。対義語は身体の免疫系ががんを見つけて戦いを仕掛けている状態のHot Tumor。

免疫原性が低いとCold、高いとHotとなる。
免疫原性は、抗原が免疫反応を引き起こす性質のことで、抗原が抗体の産生や細胞性免疫を誘導する性質のこと。つまり免疫原性が低い(Cold Tumor)状態だと、抗体生産や免疫系がうまく働かないということだろうか。

大腸がんも免疫的にColdながん、と言われるそうで、Cold Tumorは免疫チェックポイント阻害剤による効果が弱い。


あとは、前にもどこかで見たこれ。

BRCA遺伝子変異陽性乳癌の半分はHR陽性であり、PARP阻害薬との併用も考えられ検討中です

ホルモン陽性だから可能性は低いと思う、という考え方は既に古いということなのだろうか。やっぱり検査すればよかったかなーと一瞬思った。


過ぎたこととか、考えても仕方がないことにとらわれないようになりたい半面、新しい情報や治療法は興味がある。
心を曇らせずに読めるようになりたい。