My life! after diagnosed with BC

神はブリュッセルに住んでいる

夏休み旅行の情報収集をしていた時に見つけた映画、「神様メール」。

2015年、フランス・ベルギー・ルクセンブルク合作、日本では2016年に公開されていた映画。全く知らなかった。
Webサイトのあらすじは、

神様はブリュッセルのアパートに家族と一緒に住んでいて、パソコンでいたずらに世界を支配している。ある日、神様の娘10歳のエアは人間に運命に縛られずに生きてほしいと思って、神様のパソコンから人々に余命を知らせるメールを送ったから、さあ大変! エアが大パニックな世界を救う旅にでると、彼女の小さくてヘンテコな奇跡は思いがけず人々のお悩みを解決していく。会社員は鳥を追い北極まで大冒険、殺し屋は不死身の美女にめぐりあい、主婦はゴリラと恋に落ち‥皆、それぞれの生きがいを見つけていく。しかしエアが最後に出会ったウィリーは死期が迫っていて―。小さな奇跡たちが呼び起こす、神様のパソコンからの人類への[最高にハッピー]なメールとは?

チラシの文句は、

余命を知らせる神様からの届いた!?
神様の娘が、大パニックの世界を救う旅に出る!

最初は舞台が気になった。次は「余命」という単語が気になった。

The Brand New Testament(英)=Le Tout Nouveau Testament(仏) が原題で、邦題の設定が不評なよう。でも一般的に日本人への聖書の認知度は高くないと思うし、(メールがストーリーのメインではないけれど)「神様メール」の方が目を留めそうだし、新・新約聖書より受け入れられやすいと思うので悪い選択ではないと思うけど。

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その映画「神様メール」の冒頭は、

”DIEU EXISTE IL HABITE A BRUXELLES”
(神は 実在し ブリュッセルに住んでいる)

www.youtube.com


すごくざっくり あらすじ(ネタバレ含):
神は家族3人でブリュッセルに住んでいる。傲慢で理不尽で身勝手で横暴で偏屈で独りよがりで小汚くてタバコを吸って酔っ払いで家族に威張り散らしている暴君。神の娘エアは父に怒り、兄のJ.C.の助言?で人間に余命伝えるメールを送って、下界へ家出する。天地創造に使うPCをロックされた神は娘を追いかける。 エアは兄の助言に従って使徒を6人作って合計18人にする。使徒の数が女神の好きな野球の数(9*2)と同じになったので(?)女神が世界をリセットしてHappyな感じに作りなおす。傲慢で横暴な神には罰が下る。

‥うっすら且つ途切れ途切れな子供のころ読んだ色々なおはなしの記憶をつぎはぎにして、設定と組み合わせると、

・神は人間苦しむのを見るのが楽しみで、災害・事故・病気などの災厄を創って
    人間の世界に送りだしている
→私の中ではギリシャ神話の神様のイメージ

・神の妻(主人公の母親)は女神なのに夫のモラハラが酷い。
   話も制限され、彼女の人生には家事と刺繍とベースボールカード収集しかない。
→女神だけれど抑圧された女性像ぽい感じ

・長男(主人公の兄)J.C.は家族を置いて家出したが、磔になった。
→ Jesus Christの暗喩だそう

 

で、主人公である神様の娘エア・10歳は暴力的で横暴な父親に反発して抵抗しようと神の威信を失墜させたいと思って、余命をスマホへメール送信し、世界をよくしたいと思って兄のまねをして家出をする。家からも出してもらえず(監禁)、暴力も振るわれている(児童虐待)ので当然といえば当然。置物の兄に相談しているとき、母親は助けてくれないと言っていた‥。

助けてくれないとはいえ、同じく虐げられている母親を置いて家出しちゃうのね。母親を置いていくのは心配だわ、とか、世界を変えたら必ず迎えにくるから、とかは一切なし。まだ10歳なのにドライだな、「子供はいずれ独立するもの」という欧米感か?と思っていたが、中盤で母親には会いたいと同年代の男の子に言っていた。よかったー。


家出する前にエアが送った、余命を知らせるメールが題名の「神様メール」。
それを知った父親・神は「今まで、奴らは俺に弱みを握られていた。それが、勝手に好きなことを始めるようになりやがった。」と言っていた。

余命=弱みか、いつまで生きられるかわからないから統制が取れているということ?
具体的な余命ではなくても、この病気になったことで人生の期限を考えた人は多いと思う。私はそれまで、人生が有限なことはわかっていてもそれを実感することはほとんどなかった。でも(特に検査になってから告知までの間は)期限が見えているならば、なにをして過ごしたいのだろう、私はどうしたいだろうということを考えた。
やりたいことをやって会いたい人に会って、行ってみたいところへ行って食べたいものを食べて思い残すことがないようにしたいとも思うし、今までと同じに過ごしたいという気持ちもわかる。
私が本当にやりたいことってなんだろう。

映画の中の人達は、余命を知ったことで、働くのをやめてやりたいことに打ち込み始め、世界中の戦闘は放棄される。パーティーに明け暮れる、不公平さに泣き崩れる、本当に余命が正しいのか自殺してみる、子供の将来を悲嘆するといった余命を知ったからの行動に出る人もいるし、いつもと変わらぬ生活を送ろうとする人もいる。

エアは世界をよくするために、家出先で父親の書斎でランダムに選んだ6人の使徒にコンタクトする。
この6人の余命やバックボーンにまつわるエピソードが語られて、それが交差して話が進んでいくオムニバス形式で構成されている。
何故6人の使徒なのかとか、女神の趣味が登場する理由とか兄の話、とかたくさんのプロットがちりばめられている。
私は「使徒が18人になったから女神がリセットすることができた」という関連性がよくわからなかった。でもこれもきっとどこかで出てきていたのだろう。


神が創った、不快の法則(マーフィーの法則?):

・パンはジャムを塗った方から床に落ちる
・必要な睡眠の長さは「あと10分」である
・バスタブに身を沈めた途端、電話が鳴り出す
・常に隣の列の方が速く進む
・ある日恋に落ちてもその女と一生を共にすることはまずない


印象に残ったシーン:

・兄J.C.は置物として登場する。棚に座って脚ぶらぶらしてる‥。
・J.C.はJean-Claude Van Dammeのこと?と訊ねられるシーンがある
   ジャン・クロード ヴァンダムってベルギー出身だったのね。
・「冒険家になるジャン=クロード」という役柄も登場する。
    ポピュラーな名前なのかな??

・失った「手」がキッチンのテーブルの上を滑って踊る。
    夢とはいえシュール。

カトリーヌ・ドヌーヴがゴリラ(!)と恋をする。
   キスシーンやベッドシーン(?)まである。。

・最後の晩餐の絵に一人ずつ使徒が増えていく

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左がオリジナル。追加(?)の6人は現代の服装なのですぐわかる!

・「水の上を歩く」がいかにも聖書っぽい

・横暴な神(父親)は不法移民と共に強制送還されるが、なぜウズベキスタン
 (自分が行きたい国だからか、ウズベキスタン=不法移民とか、工員として
    下請け単純労働しているという、実名での国のイメージ付が引っかかる‥)

・神様が住む世界(家)とブリュッセルは洗濯機でつながっている。
   どこかで見たことがあると思ったら、「バブルへGO! タイムマシンはドラム式」。
   机の引き出しならドラえもんだったのに。


女神(女性)が世界を創造するとこうなる:

・空が花柄!
・妊娠・出産は年齢や性別、種(!)を問わない
・自由に日光浴できる(ヨーロッパっぽい!)
・重力に逆らえる
・水の中で過ごせる


映画の感想としては、随分ブラックだな、と思ったけれど面白かった。
主人公のエアはとびきりかわいいし、映像もおしゃれでいい感じだし、6人の使徒のココロから聞こえる音楽も素敵。

なのに、なんとなくすっきりしない、さみしい気持ちが残る。きっと、いくら嫌な人でも父親が工場で働かされていて、さらに家族離散というのが気になるのだと思う。。
あまりたくさん見ていないが、フランス映画らしい(ベルギー・ルクセンブルクと合作だけど)映画、という印象。

神は暇つぶしに書斎のパソコンで世界創造をしていて、最初にブリュッセルの街を作った。そこに裁判所を置き、キリンやニワトリやトラを街に配置してみた。が、しっくりこないので自分に似せた男を作って道に置いた。その男は建物の最上階の食堂でイブに出会う‥というシーンがある。

アダムがイブと出会う建物は王立図書館とその最上階にある食堂、キリンが出てくるのはブリュッセル公園近くのRue Belliard 21、ジャン=クロードが居座る公園はカンブルの森(Bois de la Cambre)、エアが神から逃げるために手をつないで水の上を歩いて渡ったのはホテルから徒歩15分程度のThe Loft Boatという運河だった。神が最初に配置した裁判所はブリュッセルの南駅よりさらに南にある。

ブリュッセルの街を歩いて、映画に出てきた風景を見かけたら「あー、これ見た!」となるかな♡