My life! after diagnosed with BC

2018年版 乳癌診療ガイドラインが気になる ②

「乳癌診療ガイドライン2018年版」は日本乳癌学会学術総会にあわせて5月16日に発行されたそう。
未だWeb版がUPされていないので詳細を読んでいないが、以前より少し具体的な説明があった。書いている内容が被る部分もあるかも‥。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/report/201805/556099.html


◎大きく変わったところ

ガイドラインの構成が総説、CQ(クリニカルクエスチョン)、BQ(バックグランドクエスチョン)とFQ(フューチャーリサーチクエスチョン)となり、BQとFQが新しく加わった。BQは従来の推奨グレードA相当で既に有用性が確立されて議論が不要な標準治療。FQは今後大切な内容だがエビデンスが不十分で結論が出ていない内容。

従来からあったCQは5段階評価から実施すること/しないことを強くもしくは弱く推奨するの4段階になった。従来のB:ほぼ確実とC1:可能性ありが実施を弱く推奨にまとめている。解説や合意率を説明しているので判断は現場の裁量となる。

推奨の強さは「エビデンスは強いか」「益と害のバランスは大きいか」「患者の価値観や好みの一致性はあるか」「コストに見合った利益はあるか」の4つで構成、アウトカムはOS(全生存期間:Overall Survival)、PFS(無増悪生存期間:Progression-Free Survival )、QOL、毒性、CBR(臨床的有用率:Clinical Benefit Rate)、ORR(全奏効割合:Overall Response Rate )、コストの7点を検討、このうち毒性とコストは-に、ほかの項目は+になり、各項目に重みづけをして評価しているそう。(OSの重要度が最も高く9点、PFSとQOLが7点、毒性とCBR、ORRが6点、コストが5点)
生存期間を長くできることが最優先、次にQOLと病勢を抑えて生活できる期間を評価し、費用は最後に考慮する、ということだ。

CQに対しては
① +と-両方のアウトカムを設定して
② それぞれについて文献からデータをとり
③独自のメタ解析を実施し
④ 小員会で検討し
⑤ 推奨決定会議でvotingを実施
その合意率もガイドラインに記載されている。

この-に関しても評価したところが新しいそう。従来、大きな試験で優位なデータが複数あれば無条件で強く推奨し、費用や有害事象に関しては評価していなかった。効果はあるが副作用も大きく、費用も掛かるものもあったが、実際の臨床現場での判断に近いものにしたということ。
前回ちょっと書いたが、選択肢を示してあるのでどうするかは現場で考えてね、どの程度の合意が得られたかも書いたので参考にしてね、ということだと(いうようなことが)明記されていた。さらに現場の先生と患者さんと相談するための資料としてほしいとのこと。やはり患者もより勉強しなくては。


◎他に興味深かったこと
・Web版ガイドラインは6ヶ月ごとに改訂を行う予定だということ。
現在進行中の試験や試験が終わってもまだ論文が出ていない場合や論文数が足りない場合、ディスカッションするには尚早と判断されたものはFQに分類され、改訂の際に見直し・言及する予定らしい。この試験は?とかこの論文は?と聞いても、2年前3年前のガイドラインを持ち出して今の標準は**だから、とされていた場合は改善されるのかも。半年ごとに見直しはうれしいが、先生方は大変そう。。

APHINITY試験(HER2陽性に対するペルツズマブ術後補助療法)、ALTERNATIVE試験(トリポジに対するHER2二重阻害とホルモン剤併用)、BRCA遺伝子変異陽性乳癌患者の薬物療法に対するPARP阻害薬のオラパリブ、化学療法奏効後に内分泌治療法を実施する化学療法のスイッチメンテナンス療法等は改訂のときに見直す予定があるよう。詳細を調べているものはなかったが、これらの試験結果に注目している人たちには順次改訂して有効なデータや治療法がアップデートされていくことはとてもありがたいのではないかと思う。

◎自分に関係ありそうなこと(E2陽性)
TAMは10年投与が強く推奨、AIの10年間投与は弱く推奨になったそう(CQ3)。10年かー、長いなあ。10年後にもし閉経していたらさらにAIとなるのかと思うと気が重い。でもあと9年くらいあるので、そのころにはまた違うデータやもっと確実なデータ、効果がある薬が出ているかもしれないので10年後のことはあまり考えずに、毎日ビタミン剤飲んでいるくらいの気分で飲み続けようと思っている。

転移・再発後の際の治療に関してはE2陽性の場合は再発後の予後も長いことが多く、OSで評価するのが大変(難しい?)なので、PFSに差があってOSに差がない場合はOSに対する効果がないということではないと考え、QOLや費用などの要因を考慮して治療のバランスを考えて選択するべきだということになったそう。(今もそうだと思うが)
経口薬がいいのか、注射がいいのか、副作用が強くても強い治療をするのか、QOL重視で共存を選ぶのか、どの程度まで費用をかけるのか等々。強い意志で自分で選ぶようになっていくのだろう‥か?もちろんそのような選択をしなくていいのが一番いいのだけれど。

◎その他、目を引いた内容
・ケモに関して
遺伝子検査もFQ。TAILORx試験でOncoType Dxの結果intermediateの場合に化学療法を併用するかどうかを検討中。まもなく結果が出るそうで、それによってCQにアップデートする予定だとのこと。自分がOncoTypeDXを一瞬検討していただけに興味津々。High-Liskのみ化学療法となればかなりケモをする人は減るのでは。(医療費も)
dose-dense化学療法の術後補助療法は条件付きで推奨だそう。(再発リスクが高く骨髄機能が十分な人、CQ11)

・センチネルに関して
術前化学療法前後で臨床的リンパ節転移陰性の場合はSLN生検を「行うことを弱く推奨」
臨床的リンパ節転移陽性だった人が術前化学療法後に陰性になった場合はSLN生検を「行わないことを弱く推奨」(=SLN生検ではなく廓清の方がいい)

SLN転移陽性でも微小転移の場合は郭清を省略することに関しては、「強く推奨する」そう。(CQ4)合意率が下がるとはいえ、弱く推奨くらいかと思っていたが強く推奨だった。
さらに、2mmを超えるマクロ転移でも、放射線をするなら廓清省略が推奨になるそう。
乳房温存の場合は(術後放射線をかけるから?)郭清を省略していいというデータが出ているので「弱く推奨」、乳房全切除をしても腋窩放射線療法を行う場合は省略を「弱く推奨」。放射線療法をしない場合は腋窩郭清を「強く推奨」と3パターンに分かれる。放射線をしないでマクロ転移を残すのは推奨しないが、放射線を当てるならどちらかといえば省略したほうがいいということ。

これもリンパ廓清をものすごくすごく心配していた身としては朗報。私が手術したHPではこの考え方は以前から取り入れていたようで、センチネルを術中迅速で評価していなかった。手術当時はSLN生検=術中迅速と思っていたので、麻酔から覚めて廓清していないと聞いた時には腋窩に転移はなかったと思った。が、入院中に主治医から「まだリンパに転移があったかはわからない、病理の結果待ち」と言われて愕然としたことを思い出す。目に見える転移はなかったよ、と言ってくれれば安心できたのにー。
でも、術中でも術後でもいざマクロ転移と言われると、廓清しないという選択にも勇気がいるのかも。。


いずれにしても、私が見たのはかいつまんで説明している内容だったので早く全文読みたいなあ。Web版の公開が待ち遠しい。
私の住む市町村区の図書館でも2015年度版の書籍を貸出していた。もう少しすれば2018年度版も入荷するのかも?