My life! after diagnosed with BC

ホルモン療法、薬の種類をおさらい

生殖機能の調整を担っている「性ホルモン」、女性ホルモンの代表は卵巣から分泌されるエストロゲンだけど、これが引き金で増えるがん。これに対しての治療は内分泌療法・ホルモン療法と呼ばれる。
ホルモン療法が効くがん細胞はエストロゲンを受け止めるためのエストロゲン受容体(ER)がある。仕組みとしては、

① 受容体(ER)にエストロゲンが結合する
   ↓
エストロゲンが結合したERが2つで1組に合体する(二量体をつくる)
   ↓
③ 二量体ががん細胞に増殖のシグナルを出す

この「シグナルが出て細胞が増える」ことを「ホルモンをえさにして増える」という表現で説明される。

ホルモン陽性とかER陽性とかホルモン感受性ありと呼ばれる場合に使用するホルモン療法抗腫瘍薬のおさらいをしてみた。(今更だけど‥)


LH-RH Agonist:

リュープリン(酢酸リュープロレリン)・ゾラデックス(酢酸ゴセレリン)
卵巣を刺激する脳の下垂体の働きを抑えることで、そもそもの卵巣でのエストロゲン合成を抑えて人工閉経の状態にする。卵巣からのエストロゲンが止まれば1/10~1/100程度に減るそう。

視床下部からLH-RHが放出
  
←ここを止める
下垂体がLHを放出
   ↓
卵巣を刺激
   ↓
卵巣がエストロゲンをつくる。(男性はテストストロンが作られる)

LH-RHとは脳の視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン、LHは性腺刺激ホルモンのこと。LH-RHのAgonist(作動薬)はLH-RHの数十倍の強さで下垂体の受容体に働く。その結果、一時的にLHの分泌が高まるが、連続的に過剰に刺激されたことでLH-RH受容体が減少してエストロゲンの分泌が抑えられる‥という仕組みだそう。
LHが一時的に増えるのが投与後のフレアアップのこと?


エストロゲン薬①SERM:

ノルバデックス・タモキシフエン・フェアストン・トレミフェンわかりにくいがタモキシフェンとトレミフェンは一般名でもあり商品名でもある。ノルバデックスとフェアストンは先発の商品名。

タモキシフェンやトレミフェンはSERM(Selective Estrogen Receptor Modulator:選択的エストロゲン受容体モジュレーター)と呼ばれる抗エストロゲン薬で、エストロゲンの代わりに受容体に入り込む。モジュレータは「信号を変換する変調器」という意味。受容体をブロックすることで、

エストロゲンが受容体に結合 ←これを止める
  ↓
2本対になる
  ↓
増殖シグナルを出す

‥という仕組みでがん細胞の増殖を抑える。

シグナルを出したくないためには二量体を作らなければいい、二量体を作らせないには受容体にエストロゲンが結合する事を阻害すればいい、ということ。

不思議だけれど組織選択的にエストロゲン作用を発揮する/発揮しないと働くので、骨に対しては骨吸収を抑制するエストロゲン様の作用を、乳房にはエストロゲン様の刺激作用は発揮しない。なんで??


アロマターゼ阻害剤:
アリミデックス(アナストロゾール)、フェマーラ(レトロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)
閉経後は卵巣からエストロゲンは分泌されなくなり、エストロゲン量は1/10~1/100に減る。が、脂肪組織や肝臓・筋肉・乳がん組織の中にあるアロマターゼという酵素が副腎皮質で分泌するアンドロゲンに作用してエストロゲンを作る。
AI(アロマターゼ阻害剤)は、この酵素を抑えることでエストロゲンを作れなくする。

副腎皮質からアンドロゲンが放出
   ↓
脂肪や肝臓、筋肉からアロマターゼが分泌
   ↓ ←これを止める
アロマターゼとアンドロゲンが作用してエストロゲンになる

閉経後の肥満が再発率を上げるのは脂肪からエストロゲンが出るから。でも閉経前でも同じことなのでは‥。そしてLH-RH Agonistで人工閉経だったり化学療法閉経であればやはりAIで抑えるのが理にかなっていると思うのだけど。でもAIは閉経後の薬でLH-RH Agonistと併用はしない。なぜ??

そのAIには3種類あり、非ステロイドステロイドの2タイプに分かれる。アリミデックスとフェマーラは非ステロイド性で、アロマシンがステロイド性。


エストロゲン薬②SERD:
閉経後の再発治療で使うフェソロデックス(フルベストラント)も抗エストロゲン薬に含まれ、SERD(Selective Estrogen Receptor downregulator:選択的エストロゲン受容体抑制薬)と呼ばれる。
ERに対する拮抗作用がタモキシフェンと比較して2桁増強されていて、さらに結合できなかったERを壊すというTAMやトレミフェンのSERMにはない働きがある。
エストロゲン受容体(ER)を壊す効果もあり、受容体をなくしてさらに結合を阻止する二重の効果で増殖を抑える。

エストロゲンが受容体に結合 ←これを強力に止める&受容体を壊す
  ↓
2本対になる
  ↓
増殖シグナルを出す

これも組織特異性により乳房のみに働き、骨や子宮にはエストロゲン用作用を残す。
よくできてるなあ。色々不思議だわ。