My life! after diagnosed with BC

TAMとSSRIとCYP2D6問題

以前から私が不安に思っていたCYP2D6とTAMとSSRI問題。

きっかけは「CYP2D6を中程度に阻害するSSRIのひとつのパキシルとタモキシフェンを併用している人は乳癌による死亡リスクが上昇し、そのリスク併用していた期間に比例して上昇した」という論文だと思う。
(日本語訳が2か所から出ているが出元は一緒、訳者や解説は違う)


https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/201002/514197.html

これによると、タモキシフェンによる治療期間の41%の期間パロキセチンを併用するとタモキシフェン服用中止後5年以内に5%の割合で乳がんで死亡すると推定している。
でも、タモキシフェンと同時に他のSSRIを服用した女性では死亡リスクの上昇は見られなかったとされていて、「他のSSRI」にはジェイゾロフトも含まれている。つまりジェイゾロフトを併用しても有意な死亡リスクの上昇はなかったとも言える。その一方でコメントとしてパロキセチンより弱いけれどセルトラリンジェイゾロフト)もCYP2D6を阻害すると書かれている。

でもよく読めば、この発表自体が2010年。データの収集期間は1993年から2005年で、タモキシフェンの服用を開始した時点で66歳以上が対象者とのこと。結構古い内容し、66歳以上だと閉経後の可能性が高いだろうし、今の標準治療とは違う時代の話だろう。
(‥と思うことにする)


そして偶然目にした2016年の論文。

最初のイメージはパキシルでもその他のSSRIでも同じくらいの死亡リスクになるということ?と思った。パキシルによる増加がないのではなく、他のSSRIパキシルと同等のリスクがあるという論文かと思ってどきっとした。

タモキシフェンと選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)の併用において、CYP2D6を強力に阻害するSSRIパロキセチンまたはfluoxetineは、他のSSRIと比較し死亡リスクを増加させないことが確認された。


意図としてはそういうことではないようでうれしい半面、追跡期間は2年。Luminalなら2年の追跡期間ではそりゃあ差は出ないのでは‥この論文に意味はあるのだろうか‥とまた疑いたくなる。


この二つの論文はどちらもBMJに掲載されたもの、と記載されている。
BMJとはBritish Medical Journalの略でイギリスの臨床医学誌で国際的にも権威が高いと書かれていた。 wikipediaでは「世界五大医学雑誌などと呼ばれる代表的な医学専門誌の一つである」「世界五大医学雑誌:掲載する論文のインパクトファクターの高さにより国際的に信頼されている5種類の総合医学雑誌」とも書かれていた。
‥でもこれも賛否両論のようで「欧米でもBigFiveと呼ばれている」「世界○大~は日本だけの呼び方」「BMJなどは権威に反発する様な論文を次々と載せる様になっていて」とか色々なことが書かれている。

とはいえ、2018年発表のインパクトファクターを見ると、BigFiveが妥当なのかどうかはわからないがちゃんとした雑誌のようだ。

NEJM(NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE): 79.258
Lancet:52.254
JAMA(JOURNAL OF THE AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION):47.661
BMJBritish Medical Journal):23.259
Annals of Internal Medicine:17.135


海外ではタモキシフェンを服用している女性の約25%はSSRIを服用とか、乳がん女性の半数近くはうつ病や不安症を抱えており治療を受ける25%がうつ病にかかるといったデータもあるようだ。「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」ではホルモン剤とうつについていまだに一定の見解は得られていないとされている。


海外では処方が緩いのか日本では診断を受ける状況になる人が少ないからか、理由はわからないが日本ではホットフラッシュの治療にSSRIというのも少数派な気がする。ホットフラッシュだけならタモキシフェンが効かない不安を抱えながら飲む意義がないということだろうか。。そもそも適応外だとも書かれているので一般的ではないのかも。

患者さんのための乳がん診療ガイドラインはちゃんと読んでいなかったのかもしれないことに気付く。
よく子宮体がん検診がつらい、という話を見聞きするが私は勧められたことがなかった。受けなくていいのかな、でも痛いらしいし子宮頸がん検診は受けているからまあいいか、くらいに思っていた。それに関する解説があった。

タモキシフェン内服中の方が定期的な検診を受けることにより,早期に子宮体がんを発見できる可能性が高くなるというデータはないので,タモキシフェン内服中であるからといって定期的に子宮体がん検診を受けることはお勧めしません。特に閉経前の方では,タモキシフェンにより子宮体がんが増えるというデータ自体がありません。


もちろんガイドラインに書いてあるから不要、とも言えないだろうとは思う。
ガイドラインでは実際エビデンスのある経過観察検査は年1回のマンモと定期的な問診&視触診となっているが、生化学一般に腫瘍マーカーの血液検査にエコーと(ガイドライン上では)余分な検査もしているし、そもそもリードタイムバイアスの考え方もしっくりこないしなー。


・・話がそれまくったが、今回見つけた「有効性を低下させず」は2016年の発表で1995~2013年のデータ解析とのことなのでこちらも古いものが混じっている。でも平均年齢は55歳だし、先日の乳腺外科&緩和ケア両主治医に話してもらって今度こそ納得したのだ。「SSRIの併用はTAMの効果に影響しない」に上書きされたのだと信じて、心穏やかにすごそう。

 

果物狩りが盛んな町の直売所で、小さいけれどあまーいにおいを振りまいていた桃。
顔を寄せなくても桃のにおいがする!いいにおいで食べるのがもったいないくらい。
冷やしてあるので今晩食べよう♡

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