My life! after diagnosed with BC

TAILORx試験:OncotypeDxで中間リスクだった場合の選択

またASCO2018のニュース。前回はこれ。



フェーズ3のTAILORx試験で、ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性、腋窩リンパ節転移陰性の早期乳癌でOncotypeDXで中間スコアの場合は内分泌療法のみを行っても、内分泌療法+化学療法と同等の有効性が得られるという結果が得られたという発表があったそう。http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/201806/556284.html


アメリカで実施されていたTAILORx試験。主要評価項目は中間再発スコアの患者のIDFS(浸潤性疾患がない生存期間)で、副次的評価項目はDRFI(遠隔無再発期間:distant recurrence-free interval)・RFI(無再発期間)・OS(全生存期間)だった。ER陽性HER2陰性&腋窩リンパ節転移陰性が対象。中間再発リスクとして振り分けられるのは、RS(再発スコア、Recurrence Score)が11-25で、かつ腫瘍径1.1-5.0cm、組織学的グレード分類で中間または高異型度の場合は0.6-1.0cmを対象に狭めている。

一般的に言われている低リスクはRS 0-17。中間リスクがRS 18-30、 RS 31 以上を高リスクとしているので、通常よりも中間リスクを低めに設定されている。なので、実際のレポートでIntermeiateとされていてもRS 25-30はHighとして評価されているし、同様にLowに分類されるRS 11-17もこの試験ではIntermediateに含まれる。ちなみに解析元のレポートでそれぞれのリスクになる割合は、低:中間:高=5:2:3だそう。
さらに、組織グレードⅠ以外の場合は腫瘍径を10mmまでとしている。つまり、組織グレードが高い場合はT1aでのみ、StageⅠのかなり初期の人たちを対象にしているイメージ‥??


用語の確認

組織学的グレード:
構造異型,核異型,核分裂像の3項目を各1-3点で合計3-9点として評価する。3-5点がGradeⅠ、6-7はGradeⅡ、8-9だとGradeⅢとなる。私がもらった病理結果は核異型度と核分裂像の2項目のスコアで判定する合計2-6点で評価する核グレードだけだった。(これが標準だと思っていた‥)
こちらは2-3点がGradeⅠ、4点がGradeⅡ、5-6点だとGradeⅢ。この構造異形度は腫瘍に占める腺管形成が75%以上は1点、10-75%は2点、10%未満が3点となる。
私は3点でGradeⅠだったので、構造異形のスコアが3点だったとすればGradeⅡになることになる。3項目で評価するとどう変わるのか気になるー。

腺管形成:
乳腺は元々ミルクを作って管腔の中に分泌するものなので、管腔を作るのが1つの特徴になる。管腔が多くあるということは正常の乳腺の性質が残っていると判断する。腺管の形成がほとんどない場合は 正常の乳腺の上皮の性質を失っているので異型が強くなると判断するそう。なので、腺管の形成がどのくらい残っているかを評価し、多く残っている方が低スコアとなる。
‥かなり基礎の基礎のようなのに知らなかった。核異形度のスコアはずいぶん気にしたのに。勉強不足。

IDFS:
Invasive Disease-free surviva、浸潤性の病変再発と判断された日・再発以外の癌病変の出現が判断された日・またはあらゆる原因による死亡日のうち最も早い方までの期間のこと

 

TAILORx試験に戻って、中間スコアを、①内分泌療法のみを行う群(内分泌療法群)に3399人と②内分泌療法+化学療法を行う群(標準治療群)3312人に分け、低スコア1629人は内分泌療法のみ、高スコア1389人には内分泌療法+化学療法を実施。

IDFSのハザード比は1.08(95%信頼区間:0.94-1.24)、p=0.26で内分泌療法のみの標準治療に対する非劣性が証明された。(=+ケモのメリットはなかった)
副次的評価項目でも同じ結果。
DRFIのハザード比は1.10(95%信頼区間:0.85-1.41)、p=0.48
RFIのハザード比は1.11(95%信頼区間:0.90-1.37)、p=0.33
OSのハザード比は0.99(95%信頼区間:0.79-1.22)、p=0.89

9年時点のイベントの発生率は、すべての評価項目で内分泌療法群と標準治療群の差は1%以下。遠隔転移は低スコアで3%、中間スコア全体で5%、高スコアでは13%に発生。
中間リスクの内訳を内分泌療法群:標準治療群でみると、IDFSは 83.3%:84.3%、DRFIは 94.5%:95.0%、RFIは 92.2%:92.9%、OSは 93.9%:93.8%でほぼ一緒。

中間スコアのサブグループ解析で+ケモでベネフィットが得られる可能性があると抽出されたグループは、① 50歳以下 ②RS 16-25 。中間再発スコアのち、16-20の患者では、IDFSのイベントは9%減少(遠隔転移は2%減少)したのに対し、21-25の患者では、IDFSのイベント(主に遠隔転移)が6%減少した。


用語の確認2

ハザード比:
相対的な危険度を客観的に比較する、アウトカムが発生する割合を示す相対的な指標。良いイベントに対してはハザードが大きい方が好ましく、悪いイベントの場合はハザードが小さい方が好ましい。今回のハザード比は1.08なので+ケモはIDFS期間を8%増加させる。1より小さい値のOSの場合は0.01%減少させるとなる(?)。

95%信頼区間
ハザード比は対象のみの評価なので全体適用できるように補正した値。信頼区間が1以下だとリスク減少、1以上だとリスク上昇、1をまたぐと有意差なしと評価する。この試験の場合はすべてで1をまたいでいるので、どの評価項目に対しても「ケモしてもしなくても有意差なし」となる。

p値:
データの差に対する誤差や偶然発生する差の確立、p<0.05であれば結果は有意と判断する。この試験では全て0.05以上なので有意ではないとなる。

 

私が読んだ元記事はボランティアで翻訳してくれているものなのでありがたく読ませていただいているが、表題は「中間再発スコアのHR陽性HER2陰性早期乳癌患者では術後の化学療法が省略できる」。これ、原文のままなのかどうかわからないが、これって「省略できる」なのだろうか??50歳以下でRS16-25でも+ケモじゃなくてもいいの?グレードは考慮しなくていいの?腫瘍径は考慮しないの?‥っていうか浸潤径じゃなくて腫瘍径で10mmってずいぶん条件が狭くない?先日のNHKのASCOに対するニュースもそうだが、3次情報は疑う気持ちを忘れずに聞かないとダメなのね。結局自分で原文を読む努力が必要ということか。

データ解析は修論を書くのに少し使ったきりで既に記憶のはるか彼方。思い出しながら論文を読むのも面白いけれど、正しく理解できているか不安になるのでやっぱり解説が必要だ。患者向けの抄読会とか雑誌会みたいなイベントがあれば面白いのに。

元の論文は、New England Journal of Medicine誌の6月3日号に掲載されているそう。全文読みたい。

 

結局「中間リスク」とひとくくりにするのは難しく、中間リスクのうちどの程度低リスクもしくは高リスクに近いRSなのかと、その他要因も加味して検討するのがいいように思えた。あと、グレードが2以上だと腫瘍径10mmまでと条件が厳しくなることを思うと、やっぱりKi-67だけではなくグレードも大事なのね。
病理の結果が出る前、「Luminal Aでもグレードが高いとケモを勧めざるを得ない」と言われていた。当時はKi-67でLuminalAとBを分けているのに、グレードはケモの追加のどこに関係するの?と疑問だった。
さらにWebで乳腺外科の先生がやっている某Q&Aに「グレードは参考程度でしかない、Ki-67でA/Bを分けるべき」と声高に書いているのを見ていたので、グレードが高かった時(というかケモを勧められたら)には絶対にOncotypeDXを申し込もうと思っていた。
結局、術前よりも腫瘍径は小さくなったが、Ki-67は上昇、核異形度も上がり、PgRは下がったので、すっきりLuminalA!とは思えなかったが、「この結果ならこの病院でもケモは勧めない」と言ってくれたのを信じることにした。
どうしてもケモに抵抗があったのでうれしい病理結果ではあったが、それでもしばらくは本当に本当に本当に不要なのかをもやもや悩み続けていた。主治医いわく「ここ(の病院)は抗がん剤を多く使う」のに、カンファで不要となったのだからそれを信じようとは思ったが、それでもやっぱり患者にとってはこういうこと。

乳がんに限らず、治療指針の説明では、再発やリスク、副作用の発現率という名のもとに、多くの確率が数字で語られます。「これこれだと5%、これこれだと15%。確かに統計的には正しい。でも、患者さんにとっては、常にゼロか100。再発するのかしないのか個人としては2分の1の確率

同じようなことを主治医も言っていたことを思いだした。いずれにしても決断するって難しいけれど、効果が高い人には納得した治療を、効果が低い人には省略を検討できる情報が提供できるようになってほしい。

治療の選択といえば、CYP2D6遺伝子チェックテスト。月曜日に返却されるレポートの内容と調べるアレルに関しての質問メールを出したが未だに返答なし。届いていないのか返答する気がないのか。。対応の悪さと信頼度がイコールとは限らないが、なんだか受ける気がなくなってきたかも。