My life! after diagnosed with BC

CYP2D6アレルにTAM増量は有効?エンドキシフェンの血中レベルは向上

 ASCO(米国臨床腫瘍学会)2018のニュースがぱらぱら聞こえてくる。
NHKのニュースでも「ASCOで免疫療法が大きく取り上げられていた。この治療は費用が高額になる」というようなことを言っていた。インタビューを受けていた外国の研究者は「コストとベネフィットを考えるべきだ」と言っていたが、私が見たアナウンサーのコメントだけを聞いた人は、免疫療法がどんながんに対して効果があるのか、どういう種類の免疫療法なのか、どの程度の効果が見込めるのか、などを考えずに「免疫療法は効果があるのだ、アメリカの大きな学会ではたくさん発表されている、日本は遅れている」と自由診療でたくさんある免疫療法に人を寄せてしまうのではないかと気になった‥。
ニュースってそういうものなのだろうか。10分程度の夜のニュースなので多くを伝えるのは難しいのだろうが、そういう場で簡単に取り上げるのは誤解を招くのでふさわしくないように感じたけど。


そんな今年のASCOで、日本のER陽性HER2陰性再発進行がんに対するTARGET-1という試験の結果が発表されたとのこと。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/search/cancer/news/201806/556244.html

TARGET-1試験の内容は「ホルモン受容体陽性転移・再発乳がんに対するタモキシフェン治療におけるCYP2D6遺伝子型に基づく投与量設定の有用性を明らかにする」で、主要評価項目は6カ月無増悪生存(PFS)率、副次評価項目は PFS・奏効率・臨床利益率・血清中のタモキシフェン・その代謝物のレベルと効果・毒性の関係だった。

臨床試験登録


アレルがある場合(変異型ホモ・ヘテロでも)は投与量を増加させると、血中エンドキシフェンレベルは高くなり、投与量を増加させた群はPFSが長い傾向があったそうだが、6カ月PFS率は有意な差はなし、PFS中央値も増量群で長い傾向があったという表現だった。PFS中央地値とは無増悪で生存・治療継続している人の割合が50%になる期間のことなので半分の人がタモキシフェンが効果がなくなるまでの期間。優位に長かったと長い傾向の間にどの程度の差があるのかがわからないが、2.5か月の差がある。副作用には差がなかったとのことなので倍量飲むことで2.5か月タモキシフェンでの治療を続けられるのであれば倍量飲みたいのが患者心だと思った。
もちろん術後補助療法と同列ではないが、エンドキシフェンのトラフレベルはアレルなしとアレル有でタモキシフェン増量は有意差なし、アレル有でタモキシフェン標準量の場合は優位に低かったとのこと。トラフレベルってなんだろうと、日本薬学会の薬学用語解説をみてみると、「薬物を反復投与したときの定常状態における最低血中薬物濃度」「投与直前値となる。血中濃度の経時的推移の中で、変動の小さい時点であり、血中濃度のモニタリングに適している。薬効発現に一定以上の血中濃度の維持が必要な場合の良い指標となる」だそうで、アレルを持つ場合は増量しないと代謝物は優位に減少するということは示せたということだろうか?

 薬学用語解説 - 日本薬学会

このTARGET-1試験の対象者は184人。アレルなし(変異なしホモ)48人に対し、アレルをもつ人(*4も*10もそれ以外でも?ヘテロもしくは変異ホモ両方)が136人。アレルなしの人の割合は26%のみだった。前に調べた時は日本人に多い*10アレルを持つ人は40%程度となっていたのだけれど、これは転移再発もしくはStage4だからそもそも対象者にタモキシフェンに抵抗性の人(=アレルを持つ人)が多かったということなのか?でも初期治療としてTAMなのだから効果が出ないとわかっている人は含まれていないはず。となると診断時Stage4もしくはTAMを中断して再発もしくは5年とか10年投与後の再発なのだろうか??もしくはそもそもアレルを持つ日本人の割合がそのくらいあるということなのだろうか???
2015年版のガイドラインではC2で、あまり関係(根拠?)がないとされているとはいえ、気になる。レクサプロのこともあるし、やっぱりCYP2D6遺伝子型多型テスト、受けてみようかなあ。

あれ、でも、CYP2D6遺伝子型多型テストの解説を読むと、医療従事者向けには「検査遺伝子 CYP2D6 *5  22番染色体に位置する遺伝子。CYP2D6はタモキシフェンやコデイン等の代謝を行っています。*5アレルはCYP2D6遺伝子そのものを失っているため、酵素活性がありません 、解析部位:CYP2D6遺伝子全域」となっているのに対し、患者向けの説明には「このテストでは、CYP2D6遺伝子の変異(*4、*5、*10、*14、*18)の有無と*1の数を調べ、さらにそれらの組み合わせから、CYP2D6が薬を代謝する機能を予測した総合判定を行います」となっている。結果は5段階になっているようだが、総合判定だけでなくアレルの詳細も報告してくれるのだろうか。

とはいえ、TARGET-1試験では主要評価項目である6カ月PFS率は改善しなく、CYP2D6遺伝子が変異型の患者に増量投与することの有効性は示せなかったという結果だそう。日本人に多い*10アレルは大きく影響しないという考え方が一般的なようだが、やはりそういうことなのだろうか。でもタモキシフェンは薬剤費もかなり安価だし、副作用も変わらないのであれば、コストとリスクは低い。ベネフィットが期待できるのであれば、*10アレルがある人は倍量飲んでもよさそうな気がするのだけど。ベネフィットが期待できるとデータで示せないと難しいということだろうか。CYP2D6遺伝子型多型テストを受けても、TAM増量したいという希望はなかなか通らないのだろうなー。(私が通っている病院では)