My life! after diagnosed with BC

内分泌療法の選択肢が広がっている

CDK4/6阻害薬治療の最前線という記事を読んだ。

medical.nikkeibp.co.jp

CDK4/6阻害薬とは、ホルモン受容体陽性&HER2陰性で進行・再発乳癌に対して2017年12月に承認されたパルボシクリブ、2018年9月に承認されたアベマシクリブのこと。

ホルモン療法が効かなくなったら(耐性ができたら、抵抗性だったら)次は化学療法へシフト、だったが、CDK4/6阻害薬、分子標的薬、将来はmTOR阻害薬、PI3K阻害薬も組み合わせて治療できるようになる。その組み合わせと戦略に関する話。

長くて難しかったので、とりあえず気になったところをざくざく覚書。


CDK4/6阻害薬の使い方(HR陽性&HER陰性):

臨床試験の通り使うなら、1次治療は非ステロイド性のAI(レトロゾールかアナストロゾール)、2次治療以降はフルベストラントと併用。

エビデンスがある通り使うのが第一選択だが、治療を変更する際・すでにAIやフルベストラントを使用している場合は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:ラロキシフェン塩酸塩、 骨・カルシウム代謝薬(骨粗鬆症治療薬) )にプラスするのもあり。

ガイドラインでは閉経後転移・再発乳癌の1次治療として、AI単剤、フルベストラント単剤、AI+CDK4/6阻害薬が横並びで全て「強い推奨」になっているけれど、フルベストラント+CDK4/6阻害薬があってもいいのでは
→JBCRG-M07試験で、フルベストラント使用中に病勢進行した場合に+パルボシクリブの有効性が検討されている
→FALCON試験ではフルベストラントはAIよりも内臓転移がない場合には、より効果があり、内臓転移がある場合では差がなかった。
→AI投与中またはAI投与終了後の再発(AI耐性・抵抗性?)の場合はフルベストラント+CDK4/6阻害薬も効果が期待できそう

後治療の効きや遺伝子変異の発現などの考慮も必要。使えばいいというものでもない
→1次治療をAI+CDK4/6阻害薬で行った後は、化学療法・内分泌療法ともに効果がやや低下する(有意差ではない)、長期的なOSでの評価が必要かも

・CDK4/6阻害薬が効かなくなった後にmTOR阻害剤エベロリムス(アフィニトール)を使う時の併用はエキセメスタンのみなので、CDK4/6阻害薬はフルベストラントと組み合わせるのが良いのでは。

・初期治療終了から何年か経っていてホルモン依存性が高いと考えられる場合や、内臓転移がなく骨・リンパ節転移の場合は、内分泌療法薬単剤よさそう。
→ただし、PALOMA-2試験では、骨転移のみの場合でもパルボシクリブ併用の方が優位というデータがある
→臓器転移があればCDK4/6阻害薬を最初に使うのがよさそう
→骨・リンパ節・皮膚転移のみで、内分泌療法を長期間行った・内分泌療法の終了から長期間経過した晩期再発は内分泌療法単独でも良さそう

・パルボシクリブは実臨床で1次治療、2次治療では効果の持続が長い印象

・パルボシクリブもアベマシクリブも骨髄抑制があるので病状が安定したら投与を止める場合もあるが、基礎研究では投与を止めると細胞が増えるデータがある

・PALOMA-3試験には閉経前も約20%含まれていた。(LH-RH Agonist+フルベストラント+パルボシクリブ)
→CDK4/6阻害薬は内分泌療法の効果を高める薬であり、併用薬は問わない感じ→タモキシフェンとの併用で若干PK(PK:薬物体内動態)に影響するかもしれないが、基本的にはPKや副作用に大きな影響はない。
国立がん研究センター中央病院でタモキシフェン±LH-RH Agonist+パルボシクリブの医師主導治験が行われている

 


気になったこと:

化学療法後に内分泌療法に戻すと、内分泌療法の効果が少し下がることがある。内分泌療法が効く間は内分泌療法薬を単剤が第一選択
・内分泌療法薬のように、分子標的薬も継続して使用して化学療法までの期間を延ばすのがよい
→「先にケモでしっかり効果を出してそれをホルモン剤で維持」という順もあるようだが、エビデンス的にはやはり効果がある間は内分泌療法が優先ぽい。細胞の遺伝子変異の可能性があるならその後の効きと併せたOSの評価でそうなるから?

・CDK4/6阻害薬2剤(パルボシクリブとアベマシクリブ)を替えながら継続することもできるが、耐性の遺伝子変異を避けるために内分泌療法を変える方がよさそう

乳がんではホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路の異常が多く、中でもPIK3CAの変異が最も多い。

・PIK3CA遺伝子は情報伝達経路で、変異が起こると経路が恒常的に活性化することで細胞増殖が止まらなくなる
→がん細胞の培養をしている人と話した際、環境を整えなくても世話をしなくてもどんどん増えると言っていたのを思い出した。基礎実験のin vitroでのことだけど、確かにがん細胞は簡単に培養できる‥。あの勝手に増える感じは感覚的にやっぱり怖い。。

・この経路を抑制する分子標的薬(PIK3CA阻害剤やmTOR阻害剤)は重要な創薬標的の一つで、開発が進められている

・PIK3CA変異は抵抗性が生じた後に血中循環細胞遊離DNAを分離して検出できるので、リキッドバイオプシーの対象になる
→この講演会で聞いてきたリキッドバイオプシー。乳がんにはあまり適応がなさそうな話だった(と思う)が、PIK3CAの変異を血液で検出でき、阻害剤が使えるようになると病勢制御の選択肢がまた一つ増えそう。



BRCA変異陽性・HR陽性乳癌:

BRCA2変異陽性はLuminalにもある程度いる。OlympiAD試験にはHR陽性が50%(も)登録され、進行再発後・化学療法歴がなくてもOSの延長傾向がみられた。
TNBCだけではなく、Luminalでもオラパリブの効果を期待できる(BRCA変異がある)可能性がある。治療変更時には遺伝子変異を確認。
→オラパリブは副作用もあるので1次治療で使うかは、?


この副作用、卵巣がんではBRAC変異がなくても適応だからなのか、体験者の会HPには副作用の問い合わせが増加しているそう。

リムパーザ(オラパリブ)の副作用について of 卵巣がん体験者の会スマイリー


具体的には、吐き気・嘔吐、(薬剤由来の貧血・疲労症状と思われる)倦怠感で、維持療法として飲み続ける間のQOL改善が大事と書かれている。

薬の使い始めに渡される「**を服用される患者様とご家族へ」のオラパリブ版の中では、「副作用が出た時には医師へ相談することや改善する薬がある」という説明のより前に、食事や生活習慣の改善・手のツボ押しなどが色々書かれているそう。
書き方が悪いのか、最後まで読まないからなのかはわからないが、副作用が出ていても、食事の改善とか寝る体勢を変えるとか、手のツボを押す(!)とかの対処方法で我慢している方も多いとのこと。

話がそれてきているけれど、過剰に我慢しないことがここにも書いてあった。

辛い症状が出た時には辛いということを医師や看護師、薬剤師に伝えてください。
もちろん辛さを全て取ることが難しい場合もあります。
でも少しでも改善することで気持ちが楽になる場合もあります。
抱え込むことがないようお願いいたします。

食べ過ぎた・飲み過ぎた、とかのちょっとした吐き気とかではなく、抗がん剤副作用の吐き気や倦怠感まで我慢しなくていいのでは。
治療薬との相性などもあるとは思うけれど、(この薬に限らず)少しでも楽に治療ができる方法が皆に見つかりますように。

化学療法薬はいろいろ開発されるのに内分泌療法薬は頭打ち、というイメージを持っていた。閉経前はタモキシフェンとLH-RH Agonistくらいしかないからそう思っていた野だと思うが、全然そんなことはなかった。
イメージだけで失礼なことを思っていたんだ、と反省。