My life! after diagnosed with BC

がんゲノム医療に関する講演を聞きに行く

医療セミナー「特別講演 がんのゲノム医療~がん患者ひとりひとりに合った治療法~」を聞いてきた。

昨年話題となった「がんのゲノム医療」をテーマに据え、世界的なゲノム研究者として有名なシカゴ大学教授の中村祐輔先生をお招きし、ゲノム医療の現状と将来の展望について講演いただくことになりました。https://www.gsclub.jp/circle/schedule/6356


すい臓がん・肺がんといった難治性がんの啓発キャンペーンの一環の講演だが、がんゲノム医療自体は共通の話題なのでそこは気にせず申し込み。

大学病院の腫瘍内科・消化器外科教授の肺がん・すい臓がんの最先端治療講演もあったが、目的は中村祐輔先生の講演。首都圏とは違い、セミナー等で有名な先生の話を聞く機会も少ない。ミーハーだとは思うが、ヒトゲノムプロジェクトとかミレニアムプロジェクトとかポストゲノムとか、遺伝子解析とか遺伝子検査とか、将来のオーダーメイド医療はどうなっていくなんだろうとわくわくしていた頃、あちこちでお名前を目にしていた先生だ。せっかくの機会なので是非お話を聞いてみたい。
大きなプロジェクトを引っ張っている日本のゲノム医療の第一人者、というイメージだったがアメリカの大学へ移られた、という辺りで記憶が止まっている。当時は人類のチャレンジとして、数か国共同で取り組んでいたヒトゲノムプロジェクト、ヒトゲノムの塩基配列の解読が終わったというニュースが懐かしい!

今回のセミナーは偶然見つけたものの、詳細がよくわからなかった。後援は対がん協会・新聞社・TV局・各種患者団体・医師会・看護協会・薬剤師会・歯科医師会まで、共催も製薬企業に保険企業。HPの支援団体も製薬企業が目白押し。何の団体なのだろうと思ったらアメリカの膵臓がん対策の政策提言組織PanCANの日本支部であるパンキャンジャパンが中心の企画だった。一緒に主催している難治性がん啓発キャンペーン実行委員会も、啓発ってなにをしているの?とよくわからない。検診を受けてほしい、というピンクリボンのシンプルな目的はまだ解りやすいが、それでもチャリティーウォークとかゴルフコンペとか、誰に何を伝えるのを目的にしているのだろう、誰のためのイベントなのだろう‥取り組んでいる人たちはきっと善意なのだと思うのだけど、街頭募金とかと同じで、一体どう役に立っているのかが(私には)見えない。。
よくわからないが、無料で参加できる講演会を企画してくれて、うきうき参加する私のような人もいるので、やっぱり誰かの役には立っているということか。

さて当日、出勤日で休めない状況だったので一応会社に顔を出して30分早く退社。お昼ど真ん中から開始なのだが、食事はどうしよう。おなかが鳴ったら恥ずかしいなーと思っておにぎりを買って向かう。
会場はどこの駅からも微妙に遠いため、結局会社から歩いて向かう。地下から出たところで偶然開催されていたフラワーカーペットのイベント。

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材料のあまりなのか、切り花が売られていた。大好き、芍薬♡しかも小さめとはいえお手頃価格♡♡薄いピンクの方が好きなのだが、家の壁が白なので生えるのは濃いピンクだなぁとか思いだしたら決めきれずに結局2色買いする。

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やっぱりどっちもかわいい♡

 

花を持って会場へ向かう。着いてみると、あぁ、がんってやっぱり高齢者が多いのね、乳がん患者は比較的若いのだった、ということを実感。世界的にも有名な先生の講演、しかも日本に帰国後初講演と聞いていたので、アカデミックの方がもっといるかと思ったがほとんどが患者とその関係者ぽい。
写真・録音は不可、とのアナウンスが入るが、写真を撮っている人は多いし、講演の途中でも平気で出入りするという自由(?)な講演会だった。高齢者が多いからなのか、休憩時間にはスタッフが水分補給を促していたのも印象的。
最初に主催のPanCAN JAPANの代表の方から挨拶があった。自分たちのために患者団体で治験を組んだり薄理の情報のやり取りをしたりとかなり精力的な活動をされている様子。いかにもアメリカの団体の支部なのね、という感じ。

当日は予定通り、がんゲノム学、腫瘍内科、外科の先生がそれぞれ講演し、最後に会場から集めた質問に答えるという形式だった。
最初のオーダーメイド医療、プレシジョンメディシンに関する中村先生の講演は「がんの治癒率を上げるためには」という目標に対して、

1. 早期発見、スクリーニング率の向上
2. 超早期再発診断法の開発による超早期治療
3. 治療法の選択
4. 新しい治療薬

という、4つの切り口からのお話だった。面白くて1時間の講演があっという間だったのだが、わからないこともあった。質問に出したのだが、難治性がん(肺がん・すい臓がん)の集まりに乳がんに関する質問はそぐわなかったのか、質問がたくさんありすぎたからなのか答えをもらえなかったので正解がわからず気になる。
そんな気になったことや印象に残ったことを箇条書き。

超早期再発診断法の開発と超早期治療の重要性、リードタイムバイアスの考え方は実際とは異なるということ?やっぱり再発は早期に発見して早期に治療したほうが成績が良いのか?
・リキッドバイオプシーでの乳がんの検出率は40%以下、他と比べて格段に低いのはなぜか
・ということは、乳がんの再発診断にリキッドバイオプシーはあまり期待できないのか
・CYP2D6の話、TAMは通常20mg投与を変異ありヘテロは30mgに、変異ありホモは40mgに増量するだけで変異なしホモと同じ効果が得られる(日本人データ)
→CYP2D6代謝に関する遺伝子検査は有用だということ??
・変異ありで増量しない場合、10年後の再発率は20%:50%→変異なしでも20%も再発するの??
・免疫チェックポイント抗体薬、がんの特効薬のように騒がれているが大多数には効果がない乳がんは縮小率12-19%)
・〃 あまりに高額且つ自己免疫疾患のような副作用が出る(割と重篤そう)
・つい最近ニュースになっていた免疫療法による乳がんの多発転移の消失に関する論文について、効果が見込めるのはごく限られた人だけ

 

後半の腫瘍内科・外科の先生のお話は肺がんとすい臓がんに関してだったので初めて知ることが多くそれはそれで興味深かった。印象に残ったこと。

・新しい薬がどんどん出ている。肺がんのBRAF変異に対する阻害剤もちょうど先週から使えるようになった
・がんゲノム医療(パネル検査)は現状は自由診療、この病院では9月ごろ先進医療、(150名限定)、2019年度には保険適用予定(もうすぐ!!)
・免疫療法を組み合わせることで効果がある可能性がある。が、信頼できる臨床試験で実施するべき。民間療法・自費診療で行われている免疫療法・免疫細胞療法には注意が必要
・外科の先生はOPだけでがんをなくそうとしていたが限界がある、OPだけで100%は無理。「どんなに腕を磨いて手術をしても100%は治せない。暗黒のトンネルのような時代が続いていた」
・外科の先生って体格がいい人が多いし丈夫そうと思っていたら、毎日10時間以上手術して術後管理もして飲みに行く、と言っていた
・ひとりひとりに合った治療が必要な理由→腫瘍の種類が違う、同じ腫瘍でも異常がある遺伝子に違いがある、薬剤の感受性が違う、本人の免疫が違う
手術ができた≠治った、手術ができた=目で見える(検査できる)腫瘍が取れた
断端陰性切除率はOPの質を示す
膵臓は手術数が一定以上の施設で手術することが推奨されている(死亡率が低い、合併症が少ない)

あと、膵がんの講演をされた先生の最後のスライドは講座?医局?の信条だった。

全てに対して情熱的であれ
すべての患者に家族と同等の愛情を注ぎ続けよ
すべての物事に勇気をもってあたれ

 これは私を診てくれている先生の医局のものではないけれど、改めて医療に携わる方たちの心意気を聞いた気がした。あと、中村先生のスライドの最後は、

日夜を問わず研究に没頭していた中村研究室OB・現役(医師・研究者)の方々、そして、研究に協力いただいた患者さんにお礼を申し上げます

だった。一生懸命治療してくれている先生方、研究している方々に改めて感謝。OPの同意書と一緒にたくさんサインした書類の中にあった、摘出した組織の研究への利用許諾。役に立っているといいな。